睡眠とお酒の関係

睡眠への影響

お酒を飲んだ方が眠りやすいと感じたことはありませんか?寝つきを良くするためにお酒を飲んでいる人の多くがその効果を実感しています。確かに、お酒は寝つきのみを良くしますが、お酒で寝つきを良くする効果は、3~7日で体が慣れてしまって効果がなくなると言われています。また、睡眠の質を下げ、かえって目が覚める回数を増やしてしまいます。寝酒をする人はしない人と比べると疲れを感じやすいという報告もあります。
寝酒をしていた人が飲むのをやめると、寝つきが悪く感じ、不眠がちとなります。この不眠は長期化しやすい為断酒の妨げになることがありますので、医師にご相談ください。

睡眠時無呼吸症候群への影響

お酒を飲んで、睡眠をとると上気道を広げる筋肉が緩んだり、鼻や咽頭の通気が悪化します。そのため、睡眠中に呼吸が止まりやすくなってしまいます。さらに、無呼吸後に覚醒反応が起こり、呼吸は再開されますが、覚醒までの時間がお酒により長くなるため無呼吸の時間が長くなってしまいます。お酒を摂取する睡眠時無呼吸症候群患者では、心臓発作、脳卒中、突然死などのリスクが高くなるという報告もあります。

高齢者への影響

高齢者では、寝る前にお酒を飲むと睡眠の後半に喉が渇いて、水を飲みに行くときやトイレに行く際にふらついて転倒する可能性が出てくるので注意が必要です。また、お酒には利尿作用があり、頻尿を起こしやすくなります。

お酒と睡眠薬

お酒と睡眠薬を同時に内服すると、記憶障害や意識障害、異常行動、いびきや無呼吸を悪化させやすい為併用してはいけません。内臓への負担や作用が強まる心配があります。

睡眠障害対策12の指針

  1. 睡眠時間は人それぞれ、日中の眠気で困らなければ十分
    ・睡眠の長い人、短い人、季節でも変化、8時間にこだわらない
    ・歳をとると必要な睡眠時間は短くなる
  2. 刺激物を避け、眠る前には自分なりのリラックス法
    ・就床前4時間のカフェイン 摂取、就床前1時間の喫煙は避ける
    ・軽い読書、音楽、ぬるめの入浴(熱すぎる風呂はダメ)、香り、筋弛緩トレーニング
  3. 眠たくなってから床に就く、就床時刻にこだわりすぎない
    ・眠ろうとする意気込みが頭をさえさせ寝つきを悪くする
  4. 同じ時刻に毎日起床
    ・早寝早起きでなく、早起きが早寝に通じる
    ・日曜に遅くまで床で過ごすと、月曜の朝がつらくなる
  5. 光の利用でよい睡眠
    ・目が覚めたら日光を取り入れ、体内時計をスイッチオン
    ・夜は明るすぎない照明を
  6. 規則正しい3度の食事、規則的な運動習慣
    ・朝食は心と体の目覚めに重要、夜食はごく軽く
    ・運動習慣は熟睡を促進
  7. 昼寝をするなら、15時前の20~30分
    ・長い昼寝はかえってぼんやりのもと
    ・夕方以降の昼寝は夜の睡眠に悪影響
  8. 眠りが浅いときは、むしろ積極的に遅寝・早起きに
    ・寝床で長く過ごしすぎると熟睡感が減る
  9. 睡眠中の激しいイビキ・呼吸停止や足のぴくつき・むずむず感は要注意
    ・背景に睡眠の病気、専門治療が必要
  10. 十分眠っても日中の眠気が強い時は専門医に
    ・長時間眠っても日中の眠気で仕事・学業に支障がある場合は専門医に相談
    ・車の運転に注意
  11. 睡眠薬代わりの寝酒は不眠のもと
    ・睡眠薬代わりの寝酒は、深い睡眠を減らし、夜中に目覚める原因となる
  12. 睡眠薬は医師の指示で正しく使えば安全
    ・一定時刻に服用し就床
    ・アルコールとの併用をしない

厚生労働省 精神・神経疾患研究委託費
「睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班」
平成13年度研究報告書より
参考文献:「睡眠障害の対応と治療のガイドライン」

睡眠衛生のための指導内容

(睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドラインより)

定期的な運動 なるべく定期的に運動しましょう。適切な有酸素運動をすれば寝付きやすくなり、睡眠が深まるでしょう。
寝室環境 快適な寝床環境のもとでは、夜中の目が覚めるのは減るでしょう。音対策のためにじゅうたんを敷く、ドアをきっちり閉める、遮光カーテンを用いるなどの対策も手助けとなります。寝室を快適な温度に保ちましょう。暑すぎたりすれば、睡眠の妨げとなります。
規則正しい食生活 規則正しい食生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。睡眠前に軽食(特に炭水化物)をとると睡眠の助けになることがあります。脂っこいものや胃もたれする食べ物を就寝前に摂るのは避けましょう。
就寝前の水分 就寝前に水分を取りすぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。脳梗塞や狭心症などの血液循環に問題のある方は主治医の指示に従ってください。
就寝前のカフェイン 就寝の4時間前からはカフェインの入ったものは摂らないようにしましょう。カフェインの入った飲料や食べ物(例:日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)をとると、寝つきにくくなったり、夜中に目覚めやすくなったり、睡眠が浅くなったりします。
就寝前のお酒 寝るための飲酒は逆効果です。アルコールを飲むと一時的に寝つきは良くなりますが、徐々に効果は弱まり、夜中に目が覚めやすくなります。深い眠りも減ってしまいます。
就寝前の喫煙 夜の喫煙は避けましょう。ニコチンには精神刺激作用があります。
寝床での考え事 昼間の悩みを寝床に持っていかないようにしましょう。自分の問題に取り組んだり、翌日の行動について計画したりするのは、翌日にしましょう。心配した状態では、寝付くのが難しくなるし、寝ても浅い眠りになってしまいます。