お酒で悩む女性の方へ

 アルコール依存症というと、中年の男性がなりやすいものだ、意志が弱い人だというイメージがまだあるようです。依存症という病気は、依存物、依存先により、はまりやすさに性差があるものもありますが、基本的に性別は関係ありません。ですが未だに先ほど挙げた根強いイメージが、私たちの中にこびりついているようです。クリニックを受診される女性の方々も、アルコール依存症のイメージとして、同様の印象を持っておられるようです。「女性だからならないと思っていた」とか、「中年の男性がなるものだと思っていたから、自分の中でアルコール依存症ではないかと思うと、恥ずかしくて相談できなかった」など言われます。

 女性は男性に比べ、肝臓が小さく、筋肉量も少ないという体格差や、女性ホルモンがアルコールの分解を妨げると言われているため、男性の飲酒量の半分でアルコール依存症になりやすいと言われています。女性だからこそ、お酒の影響を体が受けやすいのです。妊娠中の女性の飲酒は、胎児にも影響を与えます。また、女性のアルコール依存症のピークは30~40代と言われ、飲酒開始時期に男女ほぼ差はありませんので、男性より早く若くして依存症になってしまうことが伺えます。若くして依存症になるということは、早くから生活や対人関係の困難さ、どうにもならない辛さを抱え、生きづらくなる要因の一つにもなります。

 治療に繋がることは、ただお酒をやめるだけでなく、生きづらさへの対処やどうしてそこまで飲まないとやっていけなかったのか等を考えるきっかけになります。当クリニックでは、女性のアルコール依存症者だけのミーティングを毎週木曜日に行っています。そこでは、女性のアルコール依存症ならではの苦しさ、辛さとともに、女性としての生きづらさが語られ、病気の有無を問わずに共感できることがとても多いです。

 アルコール依存症は年齢、性差関係なく、誰もがふとしたきっかけでなっていく可能性がある病気です。「ひょっとしたら病気かもしれない」「お酒やめると決意できないけど、なんとかしたいと思っている」等と思われる女性の方がいらしたら、勇気をだして医療機関に受診をお勧めします。受診に抵抗のある方は、精神保健福祉センターや保健センターなどに電話で相談することも出来ます。お酒で悩んでいる女性の方が、少しでも楽になれる方法を選択できるようになることを願っています。