家族の方が回復していくためにできること

 2023年5月より、家族向けのいくつかのグループ(集団療法)が統合され、新たな「家族グループ」として生まれ変わりました。様々な経験をされた多くの方々が一堂に会することで、今までよりも幅広い体験や思いが共有されるようになったと感じます。きっとここでの体験が、参加される方々の新たな力になっていくことでしょう。
 グループには、以下のような目的、効果があるとされています。今回はそのご紹介です。

◎ 正しい知識を得る
 病気について学ぶことで、どこからどこまでが病気の言動で、健康な言動はどこなのかの区別がつくようになります。それにより病気に不用意に巻き込まれなくなり、ひいては依存症の方の回復を促す言動がどんなものかをご理解いただけます。他の方の体験談を聞かれることで、「悪循環」から抜け出すアイディアがひらめくことも多々あることでしょう。

◎ 仲間に出会う
 仮に依存症の種類は違ったとしても、「病気のことで困っている」という点は共通するものです。それ故、体験談を語って頂ければ多くの共感が得られ、「自分一人が苦しんでいる訳ではないのだ」と感じていただけることでしょう。そういった体験の中で、新たな気づきに至ることも多く、それが状況を好転させる契機になることもしばしばです。また話を聞く際のポイントとしては、他の方との違いではなく、共通点を意識しつつ聞いていただけると良いように思います。


◎ 自分の気持ちを語る
 ご家族が病気の部分に巻き込まれ過ぎず、自分らしい人生を歩んでいただくことも、依存症という病気からの回復には必要なことだと考えられています。自分の思ったこと、経験を「自分を主語にして語る」ことで、自身の感覚を取り戻していけることでしょう。そうなれば、傷つき疲弊した中で失った自信を取り戻し、きっと本来の「私らしさ」を発揮できるようになると思われます。
 とはいえ、いきなり自分の話をすることに躊躇いを持たれる方もおられることでしょう。そんな方は、まずは他の方の発言に耳を傾けて頂けるだけで十分ですのでご安心ください。

◎ 自分のために行動する
 グループで聞かれた話を参考に、新たな趣味やストレス対処法を見つける方も数多くおられます。他の誰かのためではなく、自分自身のために時間を取ることで、現状の辛苦に向き合う余裕が生まれてくるものです。そのことが結果的に、依存症からの回復を促すこともありますから、散歩をする、買物をする、新しい服を選ぶ、音楽を楽しむ、美容院に行く、習い事をしてみる等々、今までの生活パターンを思い切って変えてみるのもお勧めです。

◎ 重荷をおろして楽になる
 ご家族の方が、依存症にまつわる問題を「自分の責任」として背負いこむのをやめることは、とても大切なことです。人は誰でも自分自身の責任をとることしかできません。いくら「あなたのせいでこうなった!」と言われたとしても、自分を変えることができるのは、最後まで自分自身しかいないのです。ご家族が楽になることで、依存症の方も次第に自分の問題に向きあうことができるようになってきます。

◎ 癒される
 長年積み重ねられてきたパターンや、長い間の心の傷は、すぐにどうこうなるものではありません。中には「自分だけ楽しんでよいのか?」と思われる方もおられるかもしれません。しかし人は、人の中でしか真に癒されることはないと言われています。仲間や治療者、援助者をはじめ、様々な人との新しい出会いを重ねながら人は癒されていくものです。
 最近では、「依存なき自立は、ただの孤立である」と言われるようにもなってきました。上手に人に依存してもらうことこそ、回復のための大きな一歩です。
 ご家族の方も、自分のために楽しんでいただいてよいのです。辛い時は、皆で協力しながら、なんとかやっていきましょう。その方が依存症の方にとっても良いことは間違いないのですから。